株主資本等変動計算書の書き方|純資産の部と一致させる
法人の事業年度終了届では、貸借対照表・損益計算書とあわせて株主資本等変動計算書(様式第17号)を添付します。純資産の各項目が1年間でどう動いたかを表す書類で、前期の数字・損益計算書・貸借対照表の3つとつながっているのが特徴です。どこか1か所が合わないと、ほかの書類との食い違いになります。
この記事では、愛知県の手引きの記載例をもとに、様式の構成、行ごとの書き方、提出前に確認したい一致のポイントを整理します。
本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。
株主資本等変動計算書とは|法人だけが添付する書類
建設業法施行規則第10条第1項第1号では、事業年度終了届に添付する書類として、法人について様式第15号から第17号の2までによる貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表を挙げています。株式会社だけでなく、合同会社などの株式会社以外の法人も対象です。
愛知県の手引きの添付書類一覧でも、株主資本等変動計算書(様式第17号)は法人のみが添付する書類とされ、個人事業主は不要です。財務諸表全体の様式の対応は「建設業の財務諸表の作り方|決算書からの組替え5ステップと勘定科目対応表」で整理しています。
様式の構成|縦に「時点と変動」、横に「純資産の項目」
様式第17号は、縦の行と横の列を組み合わせた表になっています。
| 方向 | 並んでいるもの |
|---|---|
| 縦(行) | 当期首残高 → 当期変動額(新株の発行/剰余金の配当/当期純利益/自己株式の処分/株主資本以外の項目の当期変動額(純額)など)→ 当期変動額合計 → 当期末残高 |
| 横(列) | 株主資本(資本金・新株式申込証拠金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式・株主資本合計)、評価・換算差額等(その他有価証券評価差額金・繰延ヘッジ損益・土地再評価差額金・評価・換算差額等合計)、新株予約権、純資産合計 |
資本剰余金は「資本準備金」「その他資本剰余金」、利益剰余金は「利益準備金」「その他利益剰余金(任意積立金・繰越利益剰余金)」に分かれ、それぞれ合計欄があります。横の並びは、貸借対照表(様式第15号)の「純資産の部」と同じ順番です。
行ごとの書き方(愛知県の記載例から)
| 行 | 書き方 |
|---|---|
| 当期首残高 | 記載例では「前期の当期末残高の数値が入ります」と注記されています |
| 当期変動額の各行 | 新株の発行・剰余金の配当・当期純利益などを、動いた列に記載します。減った場合は△表示です。積立金の積立て等は、空いている行に当該科目を記載し、該当する変動額を計上するよう案内されています(記載例では「任意積立金の積立」の行を設けています) |
| 当期純利益 | 損益計算書の「当期純利益」と一致させます。損失の場合は△表示で計上します |
| 当期変動額合計 | 当期に変動した額の合計(「新株の発行」〜「株主資本以外の項目の当期変動額(純額)」の合計)を記載します |
| 当期末残高 | 「当期首残高」+「当期変動額合計」です |
金額は、端数の処理を統一して千円単位で表示します。会社法第2条第6号に規定する大会社は百万円単位で表示することができ、その場合は「(単位・千円)」を「(単位・百万円)」に修正するよう案内されています。
記載例の数字で流れを確かめる
愛知県の手引きの記載例(単位・千円)のうち、利益剰余金まわりの数字を抜き出すと次のとおりです。
| 行 | 利益準備金 | 任意積立金 | 繰越利益剰余金 | 利益剰余金合計 |
|---|---|---|---|---|
| 当期首残高 | 1,437 | 21,599 | 7,439 | 30,475 |
| 剰余金の配当 | 900 | △9,900 | △9,000 | |
| 当期純利益 | 6,673 | 6,673 | ||
| 任意積立金の積立 | 1,106 | △1,106 | 0 | |
| 当期変動額合計 | 900 | 1,106 | △4,333 | △2,327 |
| 当期末残高 | 2,337 | 22,705 | 3,106 | 28,148 |
どの列も「当期首残高+当期変動額合計=当期末残高」になっています(例:繰越利益剰余金 7,439-9,900+6,673-1,106=3,106)。任意積立金の積立のように利益剰余金の中で振り替えるだけの行は、合計欄の変動が0になります。記載例では、資本金20,000を加えた株主資本合計・純資産合計が、当期首50,475から当期末48,148になっています。
提出前に確認したい3つの一致
①当期首残高=前期の当期末残高
前期の事業年度終了届で出した株主資本等変動計算書の当期末残高(=前期の貸借対照表の純資産の部)と、今期の当期首残高が一致しているかを見ます。前期分を手元に置いて照合すると確実です。
②当期純利益=損益計算書の当期純利益
手引きの損益計算書の記載例では、当期純利益(記載例では6,673千円)が、株主資本等変動計算書の「当期純利益」の行と「繰越利益剰余金」の列が交差するマスと一致すると注記されています。当期純損失の場合は、どちらも△表示です。
③当期末残高=貸借対照表の「純資産の部」
手引きでは、株主資本等変動計算書の最下段の①〜⑮と、様式第15号「純資産の部」の①〜⑮が一致すると案内されています。主な対応は次のとおりです。
| 番号 | 項目 | 記載例の当期末残高(千円) |
|---|---|---|
| ① | 資本金 | 20,000 |
| ④ | 資本剰余金合計 | 0 |
| ⑤ | 利益準備金 | 2,337 |
| ⑥ | 繰越利益剰余金 | 3,106 |
| ⑦ | 利益剰余金合計 | 28,148 |
| ⑨ | 株主資本合計 | 48,148 |
| ⑮ | 純資産合計 | 48,148 |
ほかに、②資本準備金・③その他資本剰余金・⑧自己株式・⑩〜⑫評価・換算差額等の各項目・⑬評価・換算差額等合計・⑭新株予約権も、それぞれ貸借対照表の同じ番号の欄と対応します。千円未満の端数処理の結果、合計が合わなくなった場合の調整方法は、提出先の窓口で確認すると安心です。
剰余金の配当は注記表とも照らし合わせる
株式会社は、注記表の「9 株主資本等変動計算書関係」で、発行済株式数や剰余金の配当を記載します(詳しくは「注記表の書き方|会社の種類で変わる記載項目」)。
手引きの記載例では、注記表の剰余金の配当に2回分(いずれも配当総額9,000千円)が書かれている一方、株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」の行は1回分(利益剰余金合計で△9,000)です。注記表には、事業年度末日後に行う配当のうち基準日が事業年度中のものも含めて記載するよう注記されているためで、記載例の2回目は、事業年度末日(令和8年1月31日)を基準日とし、効力発生日が事業年度末日後(同年5月31日)の配当です。
配当の金額や、その際の準備金の計上額は、会社が作成した決算書(計算書類)の株主資本等変動計算書の数字をもとに転記します。配当や準備金の取扱いそのものの判断は会社法・会計の領域ですので、不明な点は顧問の税理士・公認会計士に確認してください。
純資産合計は許可の財産要件にも使われる
手引きの貸借対照表(純資産の部)の記載例には、財産要件の目安も掲載されています。
- 一般建設業:⑮純資産合計が500万円以上であれば要件を満たします
- 特定建設業:A 流動資産÷流動負債が75%以上、B ①資本金が2,000万円以上、C ⑥繰越利益剰余金が負の値の場合に、-(⑦+④)÷①×100が20以下、D ⑮純資産合計が4,000万円以上 のA〜Dのすべてに該当していなければならない
株主資本等変動計算書の当期末残高は、この⑮などと同じ数字です。財産要件の判定方法や、確認資料の持参が必要となる場合については、手引き(申請手続編)や提出先の窓口でご確認ください。
決算書の株主資本等変動計算書との関係
株式会社などでは、決算書(計算書類)に株主資本等変動計算書が含まれていることが多く、建設業の様式でも行と列の考え方は共通しています。作業としては、決算書の株主資本等変動計算書の数字を様式第17号の該当する欄に当てはめ、単位を千円にそろえ、上の3つの一致を確認する、という順で進めると漏れを防ぎやすくなります。
その他利益剰余金の準備金・積立金について、手引きの貸借対照表の記載例では「株主総会又は取締役会の決議により設定されたものを、その名称を付して計上」と注記されています(記載例では「任意」積立金)。決算書側の積立金(例:別途積立金)をどの欄にどう書くか迷う場合は、提出先の窓口に確認してください。
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よくある質問
- Q. 個人事業主も株主資本等変動計算書を提出しますか?
- A. 提出しません。愛知県の手引きの添付書類一覧では、株主資本等変動計算書(様式第17号)は法人のみが添付する書類です。個人事業主は貸借対照表(様式第18号)と損益計算書(様式第19号)を作成します。
- Q. 合同会社でも株主資本等変動計算書は必要ですか?
- A. 必要です。建設業法施行規則第10条第1項第1号では、株式会社以外の法人も様式第15号から第17号の2までによる貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表を提出することとされています。
- Q. 金額の単位は千円ですか?
- A. 愛知県の手引きの記載例では、端数の処理を統一して千円単位で表示するよう案内されています。会社法第2条第6号に規定する大会社は百万円単位で表示することができ、その場合は単位の表示を「単位・百万円」に修正します。
- Q. 当期首残高にはどの数字を書きますか?
- A. 愛知県の手引きの記載例では、当期首残高には前期の当期末残高の数値が入ると注記されています。前期の事業年度終了届で提出した株主資本等変動計算書の当期末残高(貸借対照表の純資産の部)と照らし合わせて確認します。
根拠条文・参考資料
- 建設業法 第11条第2項(事業年度終了届)(e-Gov法令検索)
- 建設業法施行規則 第10条第1項第1号(事業年度終了届に添付する財務諸表)(e-Gov法令検索)
- 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月(p.1 添付書類一覧、p.12 貸借対照表〈純資産の部〉の記載例と財産要件、p.13-14 損益計算書の記載例、p.15 株主資本等変動計算書の記載例、p.17 注記表「9 株主資本等変動計算書関係」の記載例)