建設業財務諸表と決算書の違いはどこ?勘定科目 全対応表【保存版】
建設業財務諸表を作るとき、税理士が作った決算書のどの科目がどこに移るのか、一覧で確認したくなることがあります。この記事は、貸借対照表・損益計算書の全項目を対象に、一般的な決算書の科目と建設業財務諸表(様式第15号〜第19号)の科目を突き合わせた対応表です。
組替えの手順(どちらの区分に入れるかの判断基準など)は別記事「建設業の財務諸表の作り方」で解説しています。本記事は科目の対応関係を確認する辞書・保存版としてお使いください。
本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。
決算書と建設業財務諸表、何が同じで何が違うのか
結論から言うと、販売費及び一般管理費・営業外収益/費用・特別利益/損失といった科目は、一般的な決算書とほぼ同じ並びです。変わるのは主に次の3点です。
- 売上高・売上原価が「完成工事高/兼業事業売上高」「完成工事原価/兼業事業売上原価」の2区分に分かれる
- 貸借対照表の一部の科目(売掛金・仕掛品・買掛金・前受金など)が建設業独自の科目名に変わる
- 完成工事原価報告書という、一般的な決算書にはない書類が新しく加わる
つまり「全科目を作り直す」のではなく、「変わる科目だけを組み替え、それ以外はそのまま転記する」作業になります。以下の対応表で、どちらに当てはまるかを確認してください。
貸借対照表(様式第15号)勘定科目 全対応表
建設業法施行規則 別記様式第15号の記載順にそって、一般的な決算書の科目との対応を一覧にしました。
資産の部|流動資産
| 決算書の科目 | 建設業財務諸表の科目 | 備考 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 現金預金 | 同じ |
| 受取手形 | 受取手形 | 同じ |
| 売掛金 | 完成工事未収入金/売掛金 | 完成工事高に計上した請負代金の未収額は完成工事未収入金。兼業事業売上高に係るものは売掛金として別掲 |
| 有価証券 | 有価証券 | 同じ。金額が流動資産合計の5%以下ならその他に含めてよい |
| 仕掛品 | 未成工事支出金 | 決算日時点で完成していない工事に投じた原価 |
| 原材料・貯蔵品 | 材料貯蔵品 | 同じ |
| 短期貸付金 | 短期貸付金 | 同じ |
| 前払費用 | 前払費用 | 同じ |
| その他 | その他 | 同じ |
| 貸倒引当金 | 貸倒引当金 | △(マイナス)表示で控除 |
資産の部|固定資産
| 決算書の科目 | 建設業財務諸表の科目 | 備考 |
|---|---|---|
| 建物、構築物 | 建物・構築物 | 同じ科目にまとめて記載 |
| 機械装置、車両運搬具 | 機械・運搬具 | 同じ科目にまとめて記載 |
| 工具器具備品 | 工具器具・備品 | 同じ |
| 土地 | 土地 | 同じ |
| リース資産 | リース資産 | 同じ(有形・無形それぞれに区分あり) |
| 建設仮勘定 | 建設仮勘定 | 同じ |
| 特許権・借地権・のれん | 特許権・借地権・のれん | 同じ(無形固定資産) |
| 投資有価証券 | 投資有価証券 | 同じ |
| 関係会社株式・出資金 | 関係会社株式・関係会社出資金 | 同じ |
| 長期貸付金 | 長期貸付金 | 同じ |
| 破産更生債権等 | 破産更生債権等 | 同じ |
| 長期前払費用 | 長期前払費用 | 同じ |
| 繰延税金資産 | 繰延税金資産 | 同じ |
| 創立費・開業費・株式交付費・社債発行費・開発費 | 同左(繰延資産) | 同じ |
負債の部
| 決算書の科目 | 建設業財務諸表の科目 | 備考 |
|---|---|---|
| 支払手形 | 支払手形 | 同じ |
| 買掛金 | 工事未払金/買掛金 | 工事に係る未払金は工事未払金(税抜経理でも消費税額を含めて計上)。兼業事業売上原価に係るものは買掛金として別掲 |
| 短期借入金 | 短期借入金 | 長期借入金のうち決算後1年以内に返済する額・当座借越を含む |
| リース債務・未払金・未払費用・未払法人税等 | 同左 | 同じ |
| 前受金 | 未成工事受入金 | 完成していない工事について受け取った前受金 |
| 預り金・前受収益 | 同左 | 同じ |
| 賞与引当金など(流動) | 引当金 | 設定目的を示す名称を付して記載(例:賞与引当金) |
| 社債・長期借入金・リース債務 | 同左 | 長期借入金は1年内返済予定額を短期借入金へ振替後の残額 |
| 退職給付引当金など(固定) | 引当金 | 決算後1年を超えて返済・支払う額 |
純資産の部(法人)
株主資本(資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式)、評価・換算差額等、新株予約権という構成は、会社法の計算書類とほぼ同じです。様式第17号「株主資本等変動計算書」の各欄と数字が一致するかを確認します。
損益計算書(様式第16号)勘定科目 全対応表
売上高・売上原価|ここが最大の違い
| 決算書の科目 | 建設業財務諸表の科目 | 備考 |
|---|---|---|
| 売上高 | 完成工事高/兼業事業売上高 | 建設工事の請負によるものが完成工事高、それ以外が兼業事業売上高 |
| 売上原価 | 完成工事原価/兼業事業売上原価 | 完成工事原価の内訳は「完成工事原価報告書」として別途作成 |
販売費及び一般管理費|ほぼそのまま使える21科目
役員報酬から雑費までの21科目は、一般的な決算書とほぼ同じ並びです。次の点だけ確認してください。
| 科目 | 備考 |
|---|---|
| 役員報酬 | 役員賞与引当金繰入額もここに計上 |
| 従業員給料手当 | 工事現場に関与しない本支店・営業・兼業部門の給与等。現場の直接雇用作業員の給料は完成工事原価の労務費へ |
| 退職金 | 退職年金掛金もここに計上 |
| 法定福利費・福利厚生費・修繕維持費・事務用品費・通信交通費・動力用水光熱費・調査研究費・広告宣伝費 | 決算書と同じ |
| 貸倒引当金繰入額・貸倒損失 | 決算書と同じ |
| 交際費・寄付金・地代家賃・減価償却費・開発費償却・租税公課・保険料 | 決算書と同じ |
| 雑費 | 販管費総額の10%を超える場合、内容を示す科目を追加して明示する |
営業外収益・費用/特別利益・損失/税引前当期純利益以下
受取利息及び配当金・支払利息などの営業外項目、前期損益修正益・損などの特別項目、法人税等・当期純利益(当期純損失)の並びも、一般的な決算書と同じです。固定資産売却益・売却損は「その他」に含めて計上します。
完成工事原価報告書|新しく作成する書類
一般的な決算書にはない、建設業財務諸表だけの書類です。完成工事原価を材料費・労務費・外注費・経費の4区分で表示します(内訳の詳しい判断基準は「建設業の財務諸表の作り方」を参照)。
個人事業主(様式第18号・第19号)との違い
個人事業主の場合は、法人と共通しない科目がいくつかあります。
| 比較項目 | 法人(様式第15号・16号等) | 個人事業主(様式第18号・19号) |
|---|---|---|
| 決算日 | 任意(会社ごとに設定) | 12月31日に固定 |
| 貸借対照表の純資産の部 | 資本金・資本剰余金・利益剰余金など株主資本の各項目 | 期首資本金/事業主借勘定/事業主貸勘定/事業主利益の4項目のみ |
| 損益計算書の末尾 | 当期純利益(当期純損失) | 事業主利益(事業主損失) |
| 完成工事原価報告書 | 独立した書類(様式第16号後半) | 損益計算書の中に材料費〜経費を内書き表示(独立した書類はなし) |
| 追加提出書類 | 株主資本等変動計算書(第17号)・注記表(第17号の2)が必須。附属明細表(第17号の3)は大会社のみ | いずれも不要 |
| 貸倒引当金の表記 | 貸倒引当金 | 貸倒引当金(※債権償却特別勘定を含む) |
個人事業主の「事業主借勘定」は前期の純資産合計や資産の譲渡益等を、「事業主貸勘定」は資産の譲渡損や生活費等を計上する科目で、法人の株主資本とは別の考え方で作られています。
サポ10は、決算書のPDFをアップロードすると建設業財務諸表の様式に自動転記するWebサービスです。
この対応表にある組替えを自動で行い、Excel形式でダウンロードできます。
よくある質問
- Q. 販売費及び一般管理費の科目も建設業用に組み替える必要がありますか?
- A. いいえ。役員報酬や従業員給料手当など21科目の並びは一般的な決算書とほぼ同じで、原則そのまま転記できます。ただし従業員給料手当には工事現場に関与しない職員等の給与のみを計上し、現場の直接雇用作業員の給料は完成工事原価の労務費に振り替える点に注意してください。
- Q. 貸借対照表で必ず組み替えが必要な科目はどれですか?
- A. 売掛金は完成工事未収入金、仕掛品は未成工事支出金、買掛金は工事未払金、前受金は未成工事受入金に組み替えます。加えて、これらとは別に完成工事原価報告書という新しい書類を作成する必要があります。
- Q. 個人事業主の純資産の部が法人と全く違う書き方なのはなぜですか?
- A. 個人事業主には資本金や株主という概念がなく、期首資本金・事業主借勘定・事業主貸勘定・事業主利益の4項目で純資産を表すためです。決算日も法人と異なり12月31日に固定されています。
- Q. この対応表だけで転記作業は完了しますか?
- A. 対応表は科目の置き先を確認するための一覧です。完成工事高と兼業事業売上高の振り分け方など、実際の組替え手順は別記事「建設業の財務諸表の作り方」で解説していますので、あわせてご確認ください。
根拠条文・参考資料
- 建設業法施行規則 別記様式第15号・第16号・第18号・第19号(財務諸表の様式)
- 国土交通省告示「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」
- 愛知県 様式第15号(貸借対照表)
- 愛知県 様式第16号(損益計算書・完成工事原価報告書)
- 愛知県 様式第18号(個人・貸借対照表)
- 愛知県 様式第19号(個人・損益計算書)
- 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月